■マレーシア・ボード

 皆さん、マレーシア・ボードって、ご存じですか?

 ポケットがボード面の内側ではなく、フレーム側にある切り込まれているボードです。一見では、見過ごしてしまうのですが、良く見るとポケットの位置が違うことが分ります。マレーシア・ボードの正式な呼称は分りませんが、一般的には自分達の愛用しているボードを単に「キャロム・ボード」と呼ぶのが常です。従って、マレーシア・ボードと呼んでいるのは、マレーシア以外の人達であることは、明らかです。


 最近では、マレーシアやシンガポールで売られているため、世界のキャロム・プレーヤーもマレーシア・ボードと呼んでいます。

 このたび、大阪在住の会員の大場さんから、ボードの画像(左)を送っていただきました。このボードは、ボード面の厚さ8mmで、20年前にマレーシアで購入されたそうです。私は、これまでマレーシア・ボードに興味を持っていなかったのですが、このボードを良く見るとSurcoの文字を確認することができました。この大きな発見(?)を機会に、情報をまとめ、私の大胆な仮説を展開してみることにしました。

 スルコ社はインドの2大有名ボードメーカーの一つで、私達の使っているボード(ダイヤモンド社)の前身です。

 私が、このボードのことを最初に知ったのは、スリランカの友人との話の中ででした。次に情報をもたらしてくれたのは、日本キャロム連盟(JCF)のフランス人会員フィリップさんでした。彼は、シンガポールでこのボードを購入し、渋谷の自宅で練習ボードとして使っていましたが、昨年春にボードを持ってオーストラリアへ転勤して行ってしまいました。
 そんな中、3つ目の情報を、かつてマレーシアに駐在していた田口さんが送ってくれました。25年前に購入し日本に持ち帰ったボード(右下)を、もう使わないので、JCFを通じて希望者に譲りたいという申し出でした。

鶏が先か、卵が先か
 マレーシアタイプのボードは、かって南アジアを中心に東南アジアなど広い地域で、結構一般的なものではなかったのかと考えています。その根拠として、スリランカでもいまだにお年寄りの間で、愛用されていることが挙げられます。また、インドが製造し輸出までしていたことからも、確信が持てます。マレーシア・ボードは、現在のボードの変形ではなく、原形ではないかと私は考えています。この根拠は、他にもあるのですが、詳しいことは、ここでは省略します。

ルール
 私の知っているマレーシア・ボードのルールは、国際キャロム連盟(ICF)のルールとほとんど同じです。大きな相違はバックショットの禁止、すなわちベースラインより自分の側にあるコインを、直接、手前のポケットに入れられないということです。このバックショットを禁じるルールは、マレーシア・ボードに限ったものではなく、古典的なキャロムのルールにはよくあるものです。子供の頃から何十年とキャロムをしている人にとっては、あえてルールを難しくした方が面白いからかもしれません。しかし、マレーシア・ボードでコインを沈めるのは、例えバックショットを使っても、私たちにはかなり難しいことです。バックショットが禁止されているキャロムの1つに南極キャロムがあります。ポケットの大きなボードなので、リバースショット(フレームに反射させてポケットに入れること)にしないとゲームがつまらなくなります。

 バックショットとは、ベースラインの内側(自分のサイド)にあるコインを親指などでポケットに入れることを言います。

 左の画像の白い色は、コインとストライカーを示し、バックショットの動きを表わしています。

 ICFルールは、世界中の人が遊べるように、あるいは試合ができるように、少し容易にした共通ルールと言うことができます。 

マレーシアのICFキャロム
 マレーシアには、私たちの使っているようなICFボードももちろん存在します。マレーシアキャロム連盟は伝統のある団体で、活発なプロモーションを展開しています。しかし、残念ながらJCFとはまだほとんど交流がありません。今後、徐々に情報を交換していきたいと思っています。

プレー・スタイルの違い
 インドのトップ・プレーヤーは、自分のコインを相手サイドに集める人が多いようです。これに対して、ヨーロッパのプレーヤーは、自分のコインを自分のサイドに集めます。なぜ、インドのプレーヤーが距離の長い不利な条件を好むのか。理由のひとつは、彼らが、マレーシアと同じバックショットを禁止するルールに親しんでいたからではないでしょうか。バックショットが打てないと、おのずと遠くのコインを狙わなければなりません。つまり彼らは、遠くのコインを確実に沈められるショットの精度を持っているのです。相手サイドに自分のコインがあってもまったく問題はなく、むしろ相手に向けて打つ方が、ブレーク時のポイントを確実に得ることができるのです。

          文責:柴野浩成  

(注)日本キャロム連盟は、ICFのルールと規格ボードでゲームを楽しみ、スポーツゲームとして競技を行うものであります。マレーシア・ボードの記述は、あくまでも筆者の趣味の範囲であることを申し添えます。

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